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- 最終回(第5回) -

医療機器会社のサラリーマンをしながら創作活動を続けているという異色の経歴を持つ鈴木聖史監督がメガホンを取る新作「ホコリと幻想」。企画プロデューサー秦秀明をお迎えしての対談もいよいよ<最終回(第5弾)>。

実績豊富な映画プロデューサーが参画し、「ゼロからのリスタート」された企画も苦労の末完成し脚本制作へーー。最終回となる今回は、公開直前「ホコリと幻想」を楽しむためのキーワードが満載です。

前回の対談はこちら
← <対談④> 現実の積み重ね

対談⑤

――先ほど話をされていた、様々なキーワードですが、特に「ホプニ」と「雪虫」が…まったくわかりません(笑)少し、教えていただくことはできますか?

監督「ネタバレになるので多くは言えませんが、描き方としては…かなり振り切った感じの脚本になったのではと思っています。そこで登場するのが「雪虫」です」
「僕もそうですけど、今回、関係者でこの「雪虫」を知っていた人は、ほとんどいませんでした。でも、聞くと面白いんですよね」
監督「初雪が降る少し前に突然現れる虫で、「雪の妖精」とも呼ばれているらしいです。白い綿毛を背負っていて、本当に、雪が降ってきたみたいな錯覚を起こします。北海道の人には、当たり前の光景で、まあ…虫ですし、量も多いし、自転車に乗っていると、服とかにも付くので…邪魔者扱いもされますよね(笑)」
「フワフワ飛んでいる雪虫が掌とかに着地すると、体温で死んでしまうって聞きました」
監督「北海道の人にしてみれば、雪虫が現れると、数ヶ月間、雪に覆われる冬が来るんですよ。もちろん、冬も凄く良いんですけど、住んでいる人は…やはり春とか夏とかが良かったりしますし。毎年やってくる、長い冬の前触れです」
「その虫の意味と、物語への関わり方を…微かでも良いので感じてもらえるとですよね」
監督「あ、去年、東京でも見かけたんですよ、雪虫!」
「だいぶ、お疲れですね(笑)」

――私も…雪虫を見たことはありません(笑)なんだか聞いているというと、とても綺麗な虫のようにも思えますけどね。「ホプニ」という言葉を挙げていましたが、これも気になりました。

「アイヌ語ですよね。松野のキャラを作ってから、物語の形が出来上がり始めた頃に、松野が叫ぶ言葉を入れることになりまして、そこで候補として、かなりのパターンが出てきたんですけど、最終的に、このアイヌ語でした」
監督「松野の思いみたいなものがここに込められればと思っていました。アイヌ語で、「起き上がる」「飛び立つ」という意味があって、僕らは、「飛ぶ」という意味合いで使うことにしました」
「確か、本当にギリギリまで決まっていませんでしたよね。最終的に配られる台本がありまして、決定稿と言うんですけど、その段階でもまだ、「××◯□△!!」という記号でしたよね(笑)でも、シンプルで良い言葉に落ち着いたなという印象でした」
監督「結果的に、凄く良かったなと思いました。今回旭川を舞台にしたのもそうですが、北海道ならではのモノを物語の中に絡ませていきました。この時期の北海道は、まだ何も芽吹かない灰色で、汚れた雪もあり、とても汚いんです。ですが北海道の人にしてみれば、確かに灰色の世界ですが、これから訪れる春が来ることを…芽吹くことを期待している季節でもあります。そこに松野が初めて降り立ちます」
「物語は、川洲という、川に囲まれた街で展開することから、どこか閉鎖的なイメージが生まれて、監督にとって当たり前にあったものを、改めて、人の目を通したイメージや印象から物語を作っていったというのも、面白い瞬間だったんじゃないですか?」
監督「それは、本当にそう。ちょっと前に、積み上げの話はしましたけど、この脚本作りこそ、その連続でした。それこそ、これまでの方法ではなく」
「違ったステージだったと」
監督「そうですね。本当にそうで、例えば…」
「監督…終わらなくなりそうな気がしていますので…(笑)」
監督「…はい」

――秦さん、そうですよね(笑)もっと聞きたいところではありますが、それは別の機会とさせてください。さて、いよいよ企画対談も最終回ですが。

監督「今回の企画対談をやろうと思ったのは、今だから、回顧して、やってきたことをしっかりと自分たちの血と骨にしようと思ったのがきっかけでした。まあ、二人で終わらせても良いところではありますが(笑)正直、勝手にやってくれって思ってた人、いたと思うし、この対談」
「そうですね(笑)決してこれから映画を撮る人へのヒントとか、そんな烏滸がましい事はこれっぽっちも思っていないですよね。“もう一度、やってみろ”と言われたってこのやり方でやれることはないですから」
監督「僕らがやってきたことを外向きに出そうとしたからこそ、初めて自分たちで気が付く事も多かったですし。そういう意味では自分たちのための対談ですね、これ」
「『a windy season』の松野と『ホコリと幻想』の松野を比べても、外面的にはガラッと変わりましたけど、吐き出し方が違うだけで、『松野』という人間が抱えている壁は決してぶれていない気がしています」
監督「確かにそうですよね」
「ただ、それは別に軸をぶらさずに『ホコリと幻想』を書いたという訳ではなく、結果的にそこに回帰してきたというか…」
監督「そういう部分では『ある夜のできごと』の上映会から『a windy season』をきっかけにし、『空の色』を経て、『ホコリと幻想』に辿り着くまでの道のりを思い返してみると、企画自体の想いはずっと一つだったのかなと思います」
「私自身、そこの確認を監督とした記憶はあまり無く、だからこそ監督は作品の中身を、私は作品の土台を準備する事に没頭出来たんだと思います」

――抜群のコンビネーションということですね。

「そんな綺麗なモノじゃないです、結局出してくれなかったし(笑)」
監督「まだ言ってる(笑)」

――話を変えましょう…(笑)最後になりましたが応援してくださる皆様へ、一言お願いします。

監督「映画「ホコリと幻想」は、僕らの青写真とは異なるほど大きく成長して、間も無く公開です。その生まれるまでの、時間を勝手な対談形式で(笑)残してみました。まあ、映画の裏側なんて、本当は明かさなくても良いのでは?と思ったりもしますけど…。物語を作っているので、メッセージはそこに現れるわけですし。まあ、制作の工程を細かく話したわけではないので…良いんじゃないでしょうか(笑)」
「キャリアは浅いかも知れませんが、大の大人2人が、なり振り構わず二年間走り回ったらこうなりました。このあと、今回のスタッフ、キャストと会っていくわけですが…企画チームの対談としてはここまでです。ありきたりですが、本当に、すべてのスタッフ、キャスト、そして最後まで応援していただいた旭川市のみなさま、もう本当にすべての人に感謝しています」
監督「本当に多くの人の力を借りて、生まれました。いろんな想いの詰まった映画「ホコリと幻想」、是非、劇場で観てください。そのあとは、この作品も他の映画と同じように、巣立っていくことになると思います」
「これは関係者試写が終わって、監督と話した事なんですが、企画書持って、旭川に行って…我々は、どこか…松野と同じ心境だったのかもしれないですね」
監督「僕も同じ事を感じていました。だからこそ、ダメな男ですが、我々は松野を愛することができたと思っています。皆さんは、どうでしょうか?皆さんの目と耳で、それは判断してください」

まもなく公開
2015.9.12 旭川・札幌先行上映 / 2015.9.26 東京公開
「ホコリと幻想」最新情報はこちらから

(Photo:枝優花)

『ホコリと幻想』
あの日、口をついて出たのは、嘘ではなく、夢だった。

――それは、孤独感を常に抱いている男。信頼という絆にすがりつく男。欲望に取り憑かれ逃避した男。そしてそれを席巻する女。――さまざまな人間模様が交差し歯車が擦れあい、誇りと幻想(愛、または埃のように吹き飛ばされる誇り)を模索する北海道の旭川を舞台にした物語。

主人公の「孤独な男」松野を演じるのは北海道を中心に全国で幅広く活動を続けている演劇ユニット「TEAM NACS」のメンバーで舞台のみならず映画、テレビドラマでも活躍している戸次重幸。「孤独な男」を翻弄させる美希役には女優、モデル、クリエーターとマルチな活躍を見せている美波。さらに遠藤要、内田朝陽、奥山佳恵、本田博太郎ら個性派、実力派の演技陣が脇を固めている。

「俺は成功者」、「夢を叶えた」と自ら虚しく言い聞かせる負け犬となった男が夢、挫折、絶望、狂気、救い、底力を経て再生へと向かう様がちょっぴりビターな感動を呼び起こす。

ホコリと幻想