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- 第4回 -

医療機器会社のサラリーマンをしながら創作活動を続けているという異色の経歴を持つ鈴木聖史監督がメガホンを取る新作「ホコリと幻想」。企画プロデューサー秦秀明をお迎えしての対談<第4弾>。

多くの方の協力によりオール旭川ロケによる短編映画「空の色」の撮影も完了。いよいよ「ホコリと幻想」の脚本制作へ、ステージが大きく変わります。

対談④

――映画プロデューサーをノック…と言いますと?

監督「単純に、これまで僕が撮ってきた映画とは規模が変わってきたんです。いよいよ本格的に動き出すタイミングで、この企画を現実にするために、再考しなければならない部分が多くありました。現実化するために、多くの人からアドバイスを頂きました。秦さんとも打ち合わせを重ねましたよね」
「そうですね。当初の青写真は、もっと違っていましたからね。変な言い方かもしれませんが、自然とそうなっていった気もしています」
監督「なるべくして、なった?」
「商工会議所をはじめ、旭川市全体で応援してもらえる以上、それ相応のステージにこの作品を着地させる必要があったと言いますか、逆に言えば、その道筋が見えないとそれ以上進まなかったと言いますか。それで、その規模で全体を見ていただける人が、必要になったんです」
監督「確かにそうでしたね。僕らも、違うステージで勝負したいと思っていましたし」

――それが、今回のプロデューサーをノックする切っ掛けというわけですね?

「キャリアが浅いので多くは言えませんが、普通の映画製作とはこの時点で多くのことが違っていて。この作品と鈴木監督を次のステージに導ける方を…と考えていたところ、知り合いを通じて会って頂けることになったのが…。まあ、そんな感じです」
監督「ちょっと、この辺は、僕らだけの話にしておきたくないですか?(笑)」
「そうですね(笑)僕の中では、自分たちよりはるかにキャリアも実績もある方にこの企画を信じてもらうことが一番大変だったと言いますか。一緒にやってもらえることになってから時間の流れや感覚が、一気に変わりました」

――そう言われると、聞きたくはなりますが(笑)お二人にとって、本当に良い時間だったんでしょうね。わかりました、無理強いはしません。では、その後の展開をお聞かせ頂けますか?

監督「これが、2013年の9月だったと思います。言ってしまえば、この段階で、ほとんどゼロからリスタートするような感覚でした」
「そうですね。企画全体を整理して、必要なものを厳密に洗い直しました。一つ一つの項目を現実にして積み重ねて…崩れては積み直す作業が一番多かったのはこの時期でしたよね」
監督「それで…だいぶ時間も掛かりました。企画が頓挫したと思われた方もいましたし、ご心配とご迷惑もおかけしたなと思っています」
「確かに、そうですね。それでも…大切な時間だったんじゃないですかね。企画書の骨の部分からやり直しましたし」
監督「それで、新たな企画書が誕生しました」
「初期の頃の企画書って、かなり量も多かったんですけど、この時期のものは、かなりシンプルです。削ぎ落とされていて、核が見やすいものになってました」

――それは、やはりプロデューサーと一緒に、違うステージに上がっていく感触ということですか?

監督「そうですね。脚本の話にもなりますけど、しっかりとした核と、あとは積み上げかと思います。バランスは悪くても、しっかりと積み上げているのか、どうか」
「突飛なアイデアだとしても、空中にぶら下げることはできないわけで、例えバランスが悪くても地面から一つずつ積む必要性がありました」
監督「なんか、それって…夢を形にする話をさっきしましたけど、似てません?」
「もちろん、これとは違うアプローチもあるんでしょうけど、今回は、人と人との時間の積み上げが周りの人間を説得する最重要なファクターでしたね」
監督「そして…」
「いよいよ脚本でしたね」
監督「あの話をしましょうか(笑)」

――脚本の話まで、ようやく来ましたね。この段階から書き始めたということですよね?

監督「そうですね…。2014年の9月中旬くらいから始めたと記憶しています」
「完成が、12月になってましたよね」
監督「なってしまいました(笑) とにかく書き直しの連続でした。秦さんと夜中に連絡を取りながら、書いてましたね。これまでの書き方とか、アプローチの仕方とか、考える深さとか、そう言ったものが、全然足りていなかったんだと思います」
「これは、一体、何の話なのか? 最初はそこから始まり、初稿は、確か半分に削るところから入りましたよね」
監督「初稿は、かなり酷かったと自負してます…。それから、肉を全部削って、骨だけにしました。書けば書くほど、客観性を失っていきましたし、かなり迷子になってましたね」
「モニュメントと芸術家の話に辿りついてから、認められなかった男の話、そして松野が生まれたんです。もともと「a windy season」が原案だという話はしましたが、結局、生まれた主人公は別物になりましたね。破天荒で、ダメな男」
監督「そして、旭川の上空写真を見たプロデューサーが、旭川市は「川洲に中心街がある」「川の多い街」という土地柄から見える世界観の提示があって…そして、雪虫」
「雪虫ですよね。そして、4月という春でもなくて、冬でもない北海道独特の灰色の世界。おそらく、北海道の人が一番、オススメしないシーズンですよね(笑)」
監督「間違いないですね。だって、本当に汚いですから(笑)」
「それから、ホプニというアイヌ語」
監督「ホプニにしましたね」
「監督、これは…整理しながら話さないと、止め処なくなりますね(笑)」
監督「どこから行きましょうか」

(Photo:枝優花)

『ホコリと幻想』
あの日、口をついて出たのは、嘘ではなく、夢だった。

――それは、孤独感を常に抱いている男。信頼という絆にすがりつく男。欲望に取り憑かれ逃避した男。そしてそれを席巻する女。――さまざまな人間模様が交差し歯車が擦れあい、誇りと幻想(愛、または埃のように吹き飛ばされる誇り)を模索する北海道の旭川を舞台にした物語。

主人公の「孤独な男」松野を演じるのは北海道を中心に全国で幅広く活動を続けている演劇ユニット「TEAM NACS」のメンバーで舞台のみならず映画、テレビドラマでも活躍している戸次重幸。「孤独な男」を翻弄させる美希役には女優、モデル、クリエーターとマルチな活躍を見せている美波。さらに遠藤要、内田朝陽、奥山佳恵、本田博太郎ら個性派、実力派の演技陣が脇を固めている。

「俺は成功者」、「夢を叶えた」と自ら虚しく言い聞かせる負け犬となった男が夢、挫折、絶望、狂気、救い、底力を経て再生へと向かう様がちょっぴりビターな感動を呼び起こす。

ホコリと幻想