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- 第2回 -

医療機器会社のサラリーマンをしながら創作活動を続けているという異色の経歴を持つ鈴木聖史監督がメガホンを取る新作「ホコリと幻想」。企画プロデューサーである秦秀明をお迎えしての対談<第2弾>。

前回は、同級生による「ある夜のできごと」特別上映会と、「ホコリと幻想」誕生までのきっかけについて語っていただきました。今回は、旭川市長との面会から短編映画「空の色」製作までについてお話を伺います。

対談②

――市長との面会からお聞かせください。どんなお話をされたんですか?

監督「正直、イメージが湧きませんでした。でも、せっかく市長にお会いできるなら、いや一回きりかもしれないので、ダイレクトに旭川で映画を撮らせてください!ってお願いしてしまおうという話を秦さんとはしました」
「やはり旭川で映画を撮る以上、市長にしっかりと想いは伝えたいというのはありましたよね。2013年の1月、年明け早々の訪問でした。企画書を監督が旭川に持ち込んでから、2ヶ月が経過していました」
監督「秦さん、この企画では初めての旭川となりましたよね。一番寒い時期でしたけど」
「そうですね。本当に寒かったです(笑)でも、この時に、前作「ある夜のできごと」の特別上映を運営した監督の同級生チームにもお会いできましたし、今でもこの寒い時期の旭川に行くと、この時のワクワク感と、同級生チームに会えた嬉しさとを思い出します」
監督「それで、市長との面会は、おそらく30分くらいだったと記憶していますが、緊張をかなりしましたので、定かではありません(笑)」
「北海道新聞の取材も入っていましたよね」
監督「しかも、結構大きく取り上げてもらい、企画が初めて公になった瞬間でした。記事に大きく「オール旭川」という文字が入っていて、とにかく全体で映画を作ろうという機運が高まる内容でした」
「オール旭川というワードは純粋に嬉しかったですね。凄い後押しをもらったような気がして。それもやはり市長との面会にあったわけですが、緊張していた僕らとは対照的に、市長は本当に物腰が柔らかくて、僕らのたどたどしい説明を最後まで頷きながら聞いていただいて、『ぜひ、撮ってください』と…」
監督「そう、そして『様々な方法で、とにかく応援させていただきます』と言っていただいたのは、本当に嬉しかったのを覚えています」

――緊張の中で、その言葉は心強いですよね。そしてそれが記事になり…、いよいよ始まる気配ですね。

監督「その記事の反響が、本当に大きかったんです」
「その記事を見たという反応から、たくさんの人達と繋がっていきましたよね」
監督「ええ、今回の企画実現の要となった旭川商工会議所からの支援を得る切っ掛けのひとつになったと思います」
「そのご縁で商工会議所の会頭、それから副会頭とお会いしたのが春よりも少し前だったと思います。3月頃ですね」
監督「それまでは同級生が中心で動いてきたんですけど、先輩たちとの繋がりが始まって、そこからでした」
「今回の企画は商工会議所、コンベンション協会の協力が無かったら何も現実化しなかったでしょうね」

――撮影が2014年の4月と聞いていますので、クランクインの1年前の出来事ですね。インまでの1年は、色々と撮影の準備などで過ごしたことになるんですか?

監督「準備は準備ですが、単純に「ホコリと幻想」の撮影準備をしていたわけではなく、もっと多くのことを1年でやってました」
「いま振り返ってみると、1年間なんですね…。まずは、資金に関して、それから脚本ですよね。それから、短編映画を作っていましたね」
監督「旭川が舞台の短編映画作りました。「空の色」という短編です」

――1年間でですか?短編も撮ってたんですか?

「当たり前と言えば当たり前なんですが、課題を解決するより課題を提起する方がはるかにハードルは高く、実際にはもっとたくさんやっていました。ちょっと順番に話します、僕たちも思い出しながらじゃないと混乱しそうで(笑)」
監督「そうですね(笑)話す内容に多少の前後は出そうですけど、それはご勘弁いただけたらと(笑)」
「まず手をつけた事はこの企画に賛同してくれる人を旭川でどれだけ増やせるか、ということでした。地道なことですが、今回のような企画を成功させるにはそれが絶対条件と思っていました。監督には失礼ですが、地元とはいえ2作目を撮ろうとしている監督と無名な企画者の熱を「知ってもらう事」にとにかく力を注ぎました。監督は何度も旭川に飛んでいましたよね。ほとんど毎月…ですよね?」
監督「ある期間は、それくらいの頻度だったと思います。同級生の力添えはもちろんでしたが、先輩たちの協力がなければ、人に会い続けることは難しいですし、同行してもらっていました。たくさん、アドバイスももらいました。心強かったですね。本当に、たくさんの方たちとお会いさせていただきました。みなさん、すごく応援してくださって」
「青臭い表現ですが、監督の情熱によって少しずつですけど、企画が立体的になっていく感触がありました。現実味を帯び始めてきていて、もちろん、色々ありましたけど、それでも前を向くことは出来ていたんじゃないかな。だからこそ僕は企画プロデューサーとして、そこは冷静に考えて向き合うことを心がけていました」
監督「秦さんのその冷静なスタンスには、ずっと助けられましたね。ありがとう」
「監督、まだ全部、終わってませんからね(笑)」
監督「もちろんです(笑)それでですね、賛同を得ていく中で、旭川市で映画を撮る、旭川市が映画の舞台になるということに、もっともっと現実味が出た方が、もちろん聞く方も理解しやすいでしょうし、色々と周りとも相談した結果…まずは旭川で、みんなで短編を撮ってみようと」
「それは、きっと本編のプロモーションにもなるし、旭川の協力者の方々に映画がどのように作られて、その作品がどのように見えるのかということを感じてもらえたらなと思っていました。僕たち自身も旭川で撮るとどんな空気感で、どんな撮影になるのかを感じ取りたかったというのもありますし」
監督「かなり本気で撮りたくて、それで、短編でしたが、再び、秦さんに主演をお願いしました」

――プロモーション用の短編映画「空の色」の撮影。ここから更に流れが大きくかわりそうですね…

(Photo:枝優花)

『ホコリと幻想』
あの日、口をついて出たのは、嘘ではなく、夢だった。

――それは、孤独感を常に抱いている男。信頼という絆にすがりつく男。欲望に取り憑かれ逃避した男。そしてそれを席巻する女。――さまざまな人間模様が交差し歯車が擦れあい、誇りと幻想(愛、または埃のように吹き飛ばされる誇り)を模索する北海道の旭川を舞台にした物語。

主人公の「孤独な男」松野を演じるのは北海道を中心に全国で幅広く活動を続けている演劇ユニット「TEAM NACS」のメンバーで舞台のみならず映画、テレビドラマでも活躍している戸次重幸。「孤独な男」を翻弄させる美希役には女優、モデル、クリエーターとマルチな活躍を見せている美波。さらに遠藤要、内田朝陽、奥山佳恵、本田博太郎ら個性派、実力派の演技陣が脇を固めている。

「俺は成功者」、「夢を叶えた」と自ら虚しく言い聞かせる負け犬となった男が夢、挫折、絶望、狂気、救い、底力を経て再生へと向かう様がちょっぴりビターな感動を呼び起こす。

ホコリと幻想